2016年8月10日水曜日

豊かさ

今こうして羊のことを考えながら思い出すのは、風の通る緑の原で羊たちがのんびりと草を食(は)んでいる風景だ。いい羊がいい音をつくる。それを僕は、豊かだと感じる。同じ時代の同じ国に暮らしていても、豊かさといえば高層ビルが聳(そび)え立つ街の景色を思い浮かべる人も、きっといるのだろう。


山と町。都会と田舎。大きい小さい。価値とは何の関係もない基準に、いつのまにか囚われていた。

 --- 宮下奈都 『羊と鋼の森』 から

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