2021年9月15日水曜日

生き残り

公共事業には地方がやる公共事業と、国が予算の金額を出す公共事業(直轄事業)とがあるが、地方の公共事業もその内容にはほとんど中央省庁が決めている。地方が単独で事業を行う力は自治体に残っていないので、地方もそれに従う。事実上、地方負担分には国の裏補助もつく。だからすべての公共事業は事実上、国がやっているといっていい。


日本の地方は、農業も漁業も商業も自律的活力を失っている。あらゆる営みを中央省庁に管理され続けたからである。補助金の注入がなければ生きていけないように仕組まれているのが地方経済である。地方で補助金と無縁に生活できる職業は郵便局、電話局、市役所の三つに、あとは学校と商店の店員しかいない。


どうしても、特殊法人という行政機関を作りたいのであれば、国家行政組織法を改正して、特殊法人というカテゴリーを明記しなければ法体系上、整合性がとれないし、適法性も保てない。しかし、それができなかったのは、行政の仕事でないこと(収益・投資活動)をやる団体を行政機関とすることは、法の建て前上、許されなかったからだ(憲法第七章)。それで、やむを得ず、法の孤島=「設置法」でごまかしたのである。


現在、官公庁出身者が理事に入っている公益法人は8060法人で、子会社を持つものは1850法人ある。ちなみに、子会社の数は約7000社である。官公庁出身者が常勤理事を務めている公益法人の数は3800で、官公庁出身常勤理事は5100人もいる。また公益法人に対して支払われている年間の補助金、委託費は国が4500億円、地方が7500億円で、補助金、委託費を受けている公益法人は約8000法人である。


わが国の国家予算の規模は一般に信じられている85兆円(平成12年度)ではなく、実際には財政運営の主体となっている特別会計を軸とした260兆円である。税収(47兆円)に照らして、国の予算がこのように異常な規模になった大きな要因は、郵貯(総額255兆円)、年金積立金(総額140兆円)、簡保(総額110兆円)などから特別会計で借金をし、事業予算に充(あ)てる仕組みだ。

 
   ---  石井紘基 『日本が自滅する日』 2002.1.23