2022年3月29日火曜日

初めから間違っている

 一番の問題は、人間が際限ない欲望をふくらませてエネルギーを使い過ぎたこと。根本的な問題はエネルギーを浪費する社会であって、それを軌道修正することが必要なのに、そこには触れないまま二酸化炭素が悪いから原子力がいいという議論がまかり通っている。(小出裕章)

--- チェ ソンエ 『歓喜へのフーガ 週刊金曜日 1370号』

2022年3月18日金曜日

スピード感

 「何かを言うことは最後通告のように行ない、実はそれが話のはじまりであることに気がつかないことが多いのではないだろうか。黙っているのではなく、もし、ものを言いはじめたのなら、そこから困難な話合いを続行してゆく覚悟が必要と思われる」(河合隼雄「こころの処方箋」)

「○○という意見も出ています」をやる限りでは、そうですか、そういう意見も出ていますか、で逃げられてしまう。なぜならば、その意見を発したのはアナタではないからだ。池上(彰)に「私はこう思う」だけを語ってほしいと思う。接続詞が沢山あってもいい。こちらにわかりやすく伝わらなくても構わない。それなりに難しくたって、こちらはこちらでそれを読み解こうと踏ん張るのだから、あまりこちらの理解を軽視しないでほしいとも思う。

「感」といえば、「スピード感」という言葉も連呼され、それは一向に、「スピード」が出ていない証左にもなった。「風を切りながら疾走しています」と「風を切るような勢いで疾走している感じ」では、天と地の差がある。なにせ、後者は疾走しちゃいないのだ。日本はこっちだった。

--- 武田砂鉄 『分かりやすさの罪』 2020/07/30

2022年3月17日木曜日

わかりやすい病

時代は流れて、今やスマホで検索。「わかる」から「すぐわかる」へと突き進んでいる。視聴者の「すぐわかりたい」に応えて、テレビマンは「すぐわかる」ようにする。「何が言いたいのかわからない」などと言われるのが怖くて、作り手は、口どけとノド越しを考え、食べやすいものばかりを出す。そうすると、視聴者の顎は退化して、嚙む力を失う。

---   阿武野勝彦 「さよならテレビ」 2021/6/15

2022年3月12日土曜日

いつか来た道

1932年、大日本帝国は勝手に「満州国」という国を作った。このとき国際世論の批判を浴びないよう、大日本帝国は瀋陽(しんよう)の柳条湖(りゅうじょうこ)で南満州鉄道の線路を自分たちで爆破し、それを「中国がやった」ことにして、それを理由に侵略したのである。

(略)

過去の栄光しか見えない指導者は未来を切り拓けない。豊かな縮小と連隊を創造できない人は、どこの国の指導者にもなるべきではない。(田中優子)

2022年3月3日木曜日

性急な姿勢

 「世界で生じている様々な混乱のほとんどは、ごく単純な二項対立をとりあえず想定し、それが対立概念として成立するか否かの検証を放棄し、その一方に優位を認めずにはおかない性急な姿勢もたらすものです。そうした姿勢は、それが当然だというかのように、他方の終焉を宣言することで事態の決着をはかろうとする」

ーーー  蓮實重彦(はすみ しげひこ)『齟齬(そご)の誘惑』