2023年11月25日土曜日

大量殺人の合法化・正当化

「戦争」を実行する人たちが何をするかと言えば、殺し合いである。しかし彼らは「殺し殺され屋」とは呼ばれず、立派な制服を着せられて「兵士」と呼ばれる。日本ではさらにオブラートに包まれて「自衛官」などと呼ばれる。

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人間が何のために兵器を造るのかといえば、他人を効率よく大量に殺すためである。しかし兵器を造る企業は「大量殺人産業」とは呼ばれず、「軍需産業」などと呼ばれる。軍を維持するためのお金は「大量殺人費」とは呼ばれず、「防衛予算」と呼ばれる。より効率的に人を殺すための研究は「大量殺人研究」とは呼ばれず「軍事研究」と呼ばれる。

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今回のハマスによるイスラエル人の大量殺人も、イスラエルによるパレスチナ人の大量殺人も、アメリカによるアフガニスタン人の大量殺人も、ロシア人によるウクライナ人の大量殺人も、当事者の言い分では「自衛のための戦争」ということになる。それを「自衛のための大量殺人」などと呼べば、彼らは真っ赤な顔にして怒るだろう。

 つまり大量殺人を合法化・正当化するための言葉が「戦争」なのである。

---  想田和宏 風速計 週刊金曜日 1450号 2023年11月24日