2018年1月25日木曜日

米国の問題ではなく日本国民自身の問題

問題は「アメリカが悪い」ことではない。なぜなら、われわれはモンサントがどのような企業であるのか、十分に知ることができるからだ。軽自動車の廃止にせよ、遺伝子組替え種子の大々的導入にせよ、米国の国益追及がそれを押し通そうと命じるのは、当然である。問題は、それを進んで受け容れ、あまつさえ積極的に手引きしようとする知的にも道義的にも低劣な人々がいること、そして彼らが指導的地位を占めていることにほかならない。


戦争終結から六〇年以上経て、自他ともに認めるヨーロッパの中心となってもなお、首都のど真ん中に「お前たちは負けた」と書き込まれた巨大施設を置き続けなければならない、それがドイツという国家が敗戦の結果抱え込んだ宿命なのである。


私の抱いた感情は、ナショナリズムに基づく義憤ではない。何も知らずにションベン横丁にフラフラやって来るアメリカ人は怒鳴りつけられるに値するとも思わない。あるいは、この街がアメリカへの復讐、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の精神を維持するために残されるべきだと言いたいわけでもない。命ぜられた通りに「鬼畜米英!」と叫んだ同じ口が、命ぜられた通りに「民主主義万歳!」と唱え、「アメリカは素晴らしい!」と唱和するというこの光景の相変わらずの無惨な有り様、それが同じ空間を共有する人間として私には端的に我慢ならないのである。

   ---  白井聡 「永続敗戦論」から

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