2018年7月1日日曜日

1たす1は

「例えば、絵本の中のくまさんが鮭1匹とマス1匹を食べたなら、物語の最後では必ず”まんぷく”になっている。あるいは、くまさん1匹ともう1匹のくまさんが出会ったら、蜂の巣は”からっぽ”になるはずだ。だから、1たす1の答えは”いっぱい”でいいはずなんだ。それなのに、一つの答えしか正確じゃなくて、他の答えは間違いだなんて、そんなの絶対おかしいよ」

「僕が欲しいものは、他人を叩きのめす力ではない。異質な物と、つながりを持てなくても、理解しあうことはできなくても、寄り添うことをやめないだけの足腰の強さと、感応できるだけの優しさだ。歳を取った人間の描く希望とは違うかもしれない。けれど僕たちは、それがあれば生きてゆけるのだ。敏感でやわらかな指先を、他者にむかってのばすこと、それが、僕にとっての希望なのだ。」

---  小野田由紀 『メゾン刻の湯』から


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