2020年12月5日土曜日

適応

 ある種の適応が、いかに短い繁栄とその後の長い困難をもたらすか。
感染症と人類の関係についても、同じことが言えるのではないかと思う。
病原体の根絶は、もしかすると、行きすぎた「適応」といえなくはないだろうか。感染症の根絶は、過去に、感染症に抵抗性を与えた遺伝子を、淘汰に対し中立化する。長期的に見れば、人類に与える影響は無視できないものになる可能性がある。


感染症のない社会を作ろうとする努力は、努力すればするほど、破滅的な悲劇の幕開けを準備することになるのかもしれない。大惨事を保全しないためには、「共生」の考えが必要になる。重要なことは、いつの時点においても、達成された適応は、決して「心地よいとはいえない」妥協の産物で、どんな適応も完全で最終的なものでありえないということを理解することだろう。心地よい適応は、次の悲劇の始まりに過ぎないのだから。

---  山本太郎 「感染症と文明-共生への道」から 2011/06/21発行


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