2020年12月28日月曜日

ストロー効果

 自給自足でやっていける地域からは、移民は出てこない。それが出てくるのは、現地の「生活基盤の喪失(uprooting)」がおきたあとである。つまり、発展途上地域の近代化が進み、教育が普及して、第一次産業ではやっていけない状況が発生した方が、移民は流出しやすくなる。つまり、工業化したほうが労働力移動が発生しやすい。という逆説が生まれる。


公共事業で整備された交通網は、人口や産業の都市への「吸い上げ」をもたらす「ストロー効果」を生んだ。
(略)
土建事業が行なわれれば行われるほど、都市への移動が進む。

ーーー 小熊英二 「平成史」から

工業化時代の想像力

 いまなら、携帯電話で知らせるところだ。ここに描かれている未来像は、移動技術が大幅に進歩しているのに、情報通信技術がまったく変わっていない世界である。『未来少年コナン』に描かれている「インダストリア」では、巨大爆撃機、ロボット、原子力をエネルギー源とする金属製の巨大ビルティングなどがあり、宇宙服のようなユニホームに身を固めた人びとがいる。しかし情報通信技術のほうは、マイクを握って話す卓上式の大型無線装置なのだ。

ーーー 小熊英二 「平成史」から


2020年12月5日土曜日

適応

 ある種の適応が、いかに短い繁栄とその後の長い困難をもたらすか。
感染症と人類の関係についても、同じことが言えるのではないかと思う。
病原体の根絶は、もしかすると、行きすぎた「適応」といえなくはないだろうか。感染症の根絶は、過去に、感染症に抵抗性を与えた遺伝子を、淘汰に対し中立化する。長期的に見れば、人類に与える影響は無視できないものになる可能性がある。


感染症のない社会を作ろうとする努力は、努力すればするほど、破滅的な悲劇の幕開けを準備することになるのかもしれない。大惨事を保全しないためには、「共生」の考えが必要になる。重要なことは、いつの時点においても、達成された適応は、決して「心地よいとはいえない」妥協の産物で、どんな適応も完全で最終的なものでありえないということを理解することだろう。心地よい適応は、次の悲劇の始まりに過ぎないのだから。

---  山本太郎 「感染症と文明-共生への道」から 2011/06/21発行


2020年11月7日土曜日

長いもの

 「人は弱いから群れるのではない。群れるから弱いのだ」(竹中労)

「多くの記者が長いものに巻かれ、戦争報道に突き進むなか、闘い続けた桐生悠々(きりゅうゆうゆう)。今の記者にその覚悟はあるのか」(佐高)

ーーー 望月衣塑子 佐高信 『なぜ日本のジャーナリズムは崩壊したか』

官主主義国家

 現在の日本は「民主主義国家」ではなく「官主主義国家」だと思っています。大臣としてその上に立つ政治家が愚かであればあるほど官主主義は進行し、深化します。(佐高)

あいつらの言い方で私が腹が立つのは、「誤解を招いた」というやつね。誤解したほうが悪いような言い方をする。ふざけんな、誤解じゃなくて正解して怒っているんだよ、と。(望月)

そのことと(総務省 高市早苗の電波停止発言)や安保法制報道について池上に迫った。そうしたら彼は、「反省ということを言って説明をしたら、色がついた答えになるでしょう」
と言うんだ。
でも、それはおかしい。
彼は自分でも、解説が自分の役割だというんだけど、偏らないこと、誰かの側に立たないことは、結局、いまある権力の側に立つことになるんだな。その根本的な力学を彼は理解していない。(佐高)

相手の懐まで深く入り込む取材は、時にスクープや深い解説記事を書くためには必要だ。しかし、権力の内側を描けないようではただのなれ合いにしか見られない。(望月)

ーーー 望月衣塑子 佐高信 『なぜ日本のジャーナリズムは崩壊したか』