2022年6月16日木曜日

私は私

 私たちは、「私は私」的なことをスローガンのように使う人を見かけると多くの人は「芯が強い」などと思うわけだが、実は、他者がどうであるかを気にしまくっているからこそ「私は私」と発するわけである。黒柳徹子はリアルに「私は私」だから、そんなことを口にしない。苦言も呈さない。周囲を気にしないから、ブレようがない。黒柳徹子は、「個性とは何か」「自分らしさとは何か」という問いかけ自体が、個性や自分らしさを遠ざけることを教えてくれる。 

ーーー  武田砂鉄 「芸能人寛容論」

2022年6月12日日曜日

好きだからやっているだけ

 世間の一方的な区分けをさまざま見せつけられるとき、自分たちの属しているチームと自分たちがそこでしている趣味の活動が、領域を蹴散らし、境界を曖昧にするのに一役買っているという自覚が生まれる。私たちが今やっている運動が「運動」になる瞬間だ。日常で個人が偏見と闘うためにできる運動とは、結局のところ偏見の対象を減らすことではないだろうか。「女子が〇〇をしてるだァ?」という文の〇〇に入る単語の数を減らすような。私と私のチーム、そして多くの女子サッカーチームの仲間たちは、〇〇から「サッカー」という単語をなくそうとしていることになる。
 本当はただサッカーが好きだからやっているだけで、それがたまたま運動になっちゃうわけだが、考えてみれば運動というのはすべてそういうものだろう。

--- キム・ホンビ 『女の答えはピッチにある』 20200810



2022年5月19日木曜日

幸福をもたらすもの

 「われわれの前に立つ巨大な危機は、環境危機ではありません。政治の危機なのです。現代に至っては、この大きな危機をもたらした大量消費社会を政治はコントロールできていません。逆に、人類が消費社会にコントロールされているのです。わたしたちは、発展するために生まれてきたのではありません。幸せになるために、この地球にやってきたのです。発展は、幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛を育むこと、人間関係を築くこと、子どもを育てること、そして必要最低限のモノを持つこと。発展は、これらをもたらすべきものです。」(ホセ・ムヒカ ウルグアイ大統領)

「あなたがスーパーで買い物をするとき、あなたが払っているのはお金ではなく、あなたの人生の時間なのです。」(ホセ・ムヒカ ウルグアイ大統領)


2022年5月7日土曜日

殴る前にできたこと

 私は在宅介護をしているが、どうしても苛立ちがつのる時がある。その心理をみつめてみると、諸々の事柄への無力感である。とりわけ解決するためのコミュニケーションがとれない苛立ち、つまり理解しきれない自分への怒りだ。さまざまな怒りや苛立ちの背後には、相手を救えない自分への無力感があるのではないだろうか。だからこそせめて、相手を社会につなげる一歩を、踏み出す必要がある。 

ーーー  田中優子 「週刊金曜日 1360号」