買えば買うほど景気が良くなるのだから買い物しましょう、と呼びかけるが、どう考えてもそれはおかしい。景気が良くなる人もいるかも知れないが、買い物した本人の財布からはお金がなくなる。それに乗ってはいけない。だからまず、私たちがやらねばならないのは、世間に惑わされる弱い自分を救うことだ。自分を救う道は「始末」と「才覚」である。極めて簡潔(かんけつ)なのだ。
「生の鯛でも干した鯛でも塩鯛でも、祝う心は同じ」「今日の腹も、普段の腹も、腹は同じ」と諭(さと)すところである。「祝う心」さえあれば金を使う必要はない、という意味だ。
人を使うとは、実は人を育てることなのだ、ということがわかってくる。人を雇うとは、金を払って自分のしたくないことをやらせることではない。一人前の人間をたくさん作る、いわば社会のための仕事が、仕事の重要な側面なのである。
--- 田中優子 『世渡り万の智慧袋』
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