2021年6月24日木曜日

止まらない雪玉

 少なくとも、満州事変を起こした時には、石原には一応のビジョンがあった。たとえそれが誇大妄想のトチ狂った考えであったとしても、何をしたいのか、というヴィジョンがありました。ところが彼が最初の雪玉を転がしてしまった後、その雪玉は勝手に転がり続けてしまいました。日中戦争が始まった時、石原は陸軍の参謀本部作戦部長だったのですが、ただ一人戦争の拡大を阻止しようとして走り回って、最終的に負けました。その後、関東軍参謀副長へ左遷され、そこで参謀長の東条英機に嫌われてやがて退役させられます。そして、太平洋戦争が始まった時には、立命館大学で国防学の講師をしていました。最初に雪玉を転がした人間が、それが雪崩になった時には、その雪崩に自ら吹き飛ばされてしまったという感じです。この感じが、私はすごく怖いと思いました。

--- 安冨歩 「生きるための日本史」

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