2020年5月27日水曜日

スキャンダル国家

人びとが政府についてすべて知っている、これが民主主義である。政府は多くのことを知っているが、人びとは政府のことを知らない、これは専制政治である。

政権や政府の意向にまつろわぬ者などは「左翼」であり、「日本人として恥」とまで罵(ののし)っても構わないという”空気”。これが日本社会を覆い尽しているとは思わないが、少なくともこうした、”空気”を振りまく者たちが”保守”を自称し、現政権をを熱心に支えている。

保守論壇の質が落ちたと近年よく言われる。だがそれは全く正確ではない。本来まだ語るべき能力も姿勢もない人間が、右派や保守を自称し、時に政治勢力も背景にしながら出てきているだけだ。(中村文則)

個々の外国人の人権を尊重せずに、「安価な労働力」か「治安対策の対象」としか見られないような社会が、繁栄を享受できるはずもない。(井田純)

--- 青木理 「暗黒のスキャンダル国家」

2020年5月2日土曜日

元に戻ってほしくないことについて考える

「水圧のかかった水道管をふさいでいた手を離せば、水はまた元の勢いで噴出を始める。つまり、感染者がまたしても指数関数的に増え始めるわけだ。こうしてもっとも困難な第三の段階、忍耐の段階が始まる。」

「僕らは自然に対して自分たちの時間を押しつけることに慣れており、その逆は晴れていない。だから流行があと一週間で終息し、日常が戻ってくることを要求する。要求しながら、かくあれかしと願う。
 でも、感染症の流行に際しては、何を希望することが許され、何は許されないかを把握すべきだ。なぜなら、最善を望むことが必ずしも正しい希望の持ち方とは限らないからだ。」

「COVIC-19とともに起きているようなことは、今後ますます頻繁に発生するだろう。なぜなら新型ウィルスの流行はひとつの症状にすぎず、本当の感染は地球全体の生態系のレベルで起きているからだ。」

「今回の流行で僕たちは科学に失望した。確かな答えがほしかったのに、雑多な意見しか見つからなかったからだ。ただ僕らは忘れているが、実は科学とは昔からそういうものだ。いやむしろ、科学とはそれ以外のかたちではありえないもので、疑問は科学にとって真理に増して聖なるものなのだ。」

「今、戦争を語るのは、言ってみれば恣意的な言葉遊びを利用した詐欺だ。少なくとも僕らにとっては完全に新しい事態を、そう言われれば、こちらもよく知っているような気になってしまうほかのもののせいにして誤魔化そうとする詐欺の、新たな手口なのだ。」

「でも僕は忘れたくない。最初の数週間に、初期の一連の控えめな対策に対して、人々が口々に「頭は大丈夫か」と嘲(あざけ)り笑ったことを、長年にわたるあらゆる権威の剥奪により、さまざまな分野の専門家に対する脊髄反射的な不信が広まり、それがとうとうあの、「頭は大丈夫か」という短い言葉として顕現したのだった。不信は遅れを呼んだ。そして遅れは犠牲をもたらした。」

「もっとも可能性の高いシナリオは、条件付き日常と警戒が交互する日々だ。しかし、そんな暮らしもやがて終わりを迎える。そして復興が始まるだろう。
 支配階級は肩を叩きあって、お互い見事な対応ぶり、真面目な働きぶり、犠牲的行動を褒め讃えるだろう。自分が批判の的になりそうな危機が訪れると、権力者という輩(やから)はにわかに団結し、チームワークに目覚めるものだ。一方、僕らはきっとぼんやりしてしまって、とにかく一切をなかったことにしたがるに違いない。到来するのは闇夜のようなものであり、また忘却の始まりでもある。
 もしも、僕たちがあえて今から、元に戻ってほしくないことについて考えない限りは、そうなってしまうはずだ。」

--- パオロ・ジョルダーノ 『コロナの時代の僕ら (飯田亮介訳)』

2020年4月27日月曜日

文明国家であるかどうか

一つの国が文明国家であるかどうか[の]基準は、 高層ビルが多いとか、クルマが疾走しているとか、武器が進んでいるとか、軍隊が強いとか、科学技術が発達し ているとか、芸術が多彩とか、さらに、派手なイベントができるとか、花火が豪華絢爛とか、おカネの力で世界 を豪遊し、世界中のものを買いあさるとか、決してそうしたことがすべてではない。基準はただ一つしかない、 それは弱者に接する態度である

 --- 方方(Fang Fang)(日本語訳は日中福祉プランニングの王青(おう・せい)

2020年4月22日水曜日

悪性ウィルス

私なりの結論を一言でいえば、戦後日本の民主主義体制を死滅に追い込みかねない悪性ウィルスのようなものではないかと思っている。悪性であっても少数のウィルスが身体の端っこで蠢(うごめ)いているだけなら、多少痛くても多様性の原則の下で許容することもできるが、その数が増えて身体全体に広がり始めると重大な病を発症して死に至る。
 しかも、現在は日本社会全体に亜種のウィルスや類似のウィルス、あるいは低質なウィルスが拡散し、蔓延し、ついには脳髄=政権までが悪性ウィルスに蝕まれてしまった。このままいけば、近代民主主義の原則すら死滅してしまいかねない。
  ---  青木理 『日本会議の正体』から

2020年4月7日火曜日

浮かれるんじゃねえ

「おめえらが安全だからって、浮かれるんじゃねえよ。フクシマの復興を後回しにして、スタジアムかよ。資材も何もかも持って行きやがって。あたしたちは葉民かよ。」

「ブラジルも景気は悪かったけれど、ワールドカップもオリンピックもやった。そして、誰も言わないが、もっと駄目になった。疲弊している国ほど、派手にやって失敗するんだ。」

――― 桐野夏生 『バラカ』 から