2013年12月17日火曜日

多種共存の森

学者、とくに自然科学の人たちは希少な動植物には興味を持つが、そこに住み続けることによって自然環境を守ってきた人々の暮らしには興味がなかったのだ。誰が自然を壊し、誰が守ってきたのか、地元の人たちの伝統的な生活様式こそがそこの自然環境や生態系を守る一番の力だったのではないか。天然林からの略奪の限りを尽くしてきた外部の人間が、奇跡のように残った地域に目を付けて、それが貴重だからといって、地元の人を排除するようなことは傲岸(ごうがん)なことである。物質文明の恩恵を受けながら暮らしてきた都会人は、むしろ間接的には加害者なのである。

我々人間は大量の木材をすぐに欲しがった。まるで、小麦やトウオモロコシを作るのと同じやり方で。一種類の木だけを大面積に植えてきた。このような自然には存在しない人工の森は人間が手を入れ続けなければ、自ら崩れていく。病虫害が頻発し暴風や豪雨でひっくり返ってしまう。これは自然が悪さしているのではない。森自らが多様な生物が共存する生態系を取り戻そうとしているのである。本来の森の姿を取り戻すことによってさまざまな恵みをもう一度、我々に与えようとしているのだ。

--- 『多種共存の森』 清和研二 から

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