2020年9月1日火曜日

デマゴーグ

彼女が優先したのは演説の内容ではなく、自分のビジュアル・イメージだった。何を言うかではなく、何を着るか、どんな髪型にするか、それが人の心を左右するという考えは母の教えであり、テレビ界で竹村健一から学んだことでもあった。

「小池さんには別に政治家として、やりたいことはなくて、ただ政治家がやりたいんだと思う。そのためにはどうしたらいいかを一番に考えている。だから常に権力者と組む。よく計算高いと批判されるけれど、計算というより天性のカンで動くんだと思う。それが、したたか、と人には映るけれど、周りになんと言われようと彼女は上り詰めようとする。そういう生き方が嫌いじゃないんでしょう。無理をしているわけじゃないから息切れしないんだと思う。」(池坊保子)

激しい野心と上昇志向を持ち、年上の有力者の懐に飛び込む。論文には盗作の噂がつきまとう。彼(竹中平蔵)もまた、小池同様、学歴、留学経験、英語力を武器にして蜘蛛の糸を必死で摑(つか)み、のぼっていった人である。

「目立つことが好き、思い付きで発言するが体系的、持続的な思考力はない。何が世間に受けるかだけを考えて行動する、大衆を熱狂させる独特の魅力があり、また、そのテクニックに長けているー。それは、そのまま小池にも当てはまる。」(佐野眞一『誰も書けなかった石原慎太郎』から)

自分がどう見られるかを過度に意識した表情のつくり方、話し方、決めゼリフの用意。彼(小泉進次郎)は自分の魅力の振りまき方を知っていた。ルックスと声質の良さ、ゴロ合わせのような言葉づかい。ダジャレで人の気持ちを掴(つか)む。彼もまた、「小池百合子」だった。

「デマゴーグ(注・大衆煽動(せんどう)者型政治家)の態度は本筋に即していないから、本物の権力の代わりに権力の派手な外観(シャイン)を求め、またその態度が無責任だから、内容的な目的をなに一つ持たず、ただ権力のために権力を享受することになりやすい。権力は一切の政治の不可避的な手段であり、従ってまた、一切の政治の原動力であるが、というよりむしろ、権力がまさにそういうものであるからこそ、権力を笠に着た成り上がり者の大言壮語や、権力に溺れたナルシズム、ようするに純粋な権力崇拝ほど、政治の力を堕落させ歪めるものはない」(マックス・ウェーバー著 脇圭平 訳 『職業としての政治』

---  石井妙子 『女帝 小池百合子』から

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