2023年2月15日水曜日

認知症でなくとも

実際に、アルツハイマー型認知症になっても、新しい人に出会って、その人と何度も接するようになると、海馬の萎縮のせいで、その人の名前はなかなか覚えられなくても、親しみは感じるようになります。新しい友達ができるのです。

認知症になっても、また、それ以外のどんな病気でも、人間が最後まで持ち続けるものがあります。それは自尊心です。

毎日確実に好きな餌が食べられることがライオンにとってよいわけではなく、何も食べられないかもしれないけれど自由に駆け回って、自分で探せることが、ライオンの幸福には重要だということです。

「家」が指し示しているのは、具体的な昔の家ではなく、「心が安心できる場所」なのです。

おいしい、おいしくない。これは食べてよい物か、いけない物か。そのような、生存においてとても大事な情報は、アルツハイマー型認知症の人は適切に判断できるのです。

大事な物が見当たらないときに、一瞬、自分以外のだれかのせいにすることは多いのです。なぜなら、私たちは「自分にとって大事な物を自分が失くしたりするはずがない」と思い込んでいるからです。

散歩は、外に一度出て帰ってくることによって、「自分がその日に有益なことをした」という達成感も作ってくれるかもしれません。

海馬の活動が弱まることで、扁桃体の活動が高まって、感情的に敏感になるとか、警戒心が強くなる、ということが起こるのです。

認知症に関係なく、人には、自分にとって必ずしもよいとは言えない状態を、このままでよいのだと正当化する心の働きがあります。「ストックホルム症候群」

意識的に新しいことを覚えることは難しくなっても、無意識的には体験は確実に積み重なって、脳の中に残るのです。

毎日いきいきと暮らせるのは、毎日がその人にとって特に意識することなくこなせるような、お馴染みの課題で満ちていて、簡単になっているからです。

今の自分にとって少しだけ難しいことに挑戦すると、生活の中に喜びが生まれ、自分にはまだまだ学習ができるということを信じられるようになります。

---   #恩蔵絇子 #永島徹 #なぜ認知症の人は家に帰りたがるのか #2022/07/10



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