2021年11月14日日曜日

使い捨て

 使い捨てをしないのは単に金額の問題ではありません。江戸時代の「もの」の感じ方は「同じものがない」ことに由来する、個性への愛着なのです。

着物が世界を巡りながら地上と地中を循環していたように、陶磁器もまた世界を巡りながら、人から人へ受け渡され、最後はふるさとである土に還ります。漆もまた、すべての木の成分でできていますから土に戻ります。食器であってもプラスチックではこうはいきません。

現在の紙は、1ミリか二ミリぐらいのパルプの繊維でできていますが、和紙は10ミリ以上の長い繊維でできています。しかも薬品は添加されていませんので、漉き返しは容易で環境にも問題ありませんでした。そもそも和紙の原料のコウゾやミツマタは一年草で、長いあいだ育てた木材から採るわけではありませんでした。

---  田中優子 「グローバリゼーションの中の江戸」

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