2023年3月19日日曜日

学校

 自分のことを守るためには「他人を適切に嫌いになる作法」が必要になると思う。教室という空間では、「みんなと仲良くしなさい」と言われるが、大人になってから、それは子どもを管理するための方便だったのだと知った。連帯責任という理不尽な罰則も、みんなの前で涙を流して反省させられるという羞恥刑も、教室という秩序を保つための儀式であって、人間である自分のために行われたものではない。

実際には、みんなが仲良くすることはできない。人は人を嫌いになるものだ。そして大人になるということは、嫌いな人と上手に距離を取る方法を学ぶことでもある。距離の取り方が不器用だと、人に生きづらさを押し付けることになる。

発達に凸凹がある、個性的な息子と娘。その振る舞いの全てが愛おしく誇らしい。息子も娘も、得意なことと苦手なことにムラがある。そうした個別の事情に、一斉授業を基本とする学校がミスマッチだなというのは、入学式の段階から悟ってしまった。上級生が「みなさん、にゅうがく、おめでとうございます(おめでとうございまーす!)」と唱和する。このマスゲーム。集団行動を求める謎の空間。昔から変らぬこの雰囲気。これを二人ができるようになるだろうか。いや、できるようになったとしても、それは何のためななのか、自分の学校後遺症が刺激される。

ーーー  #荻上チキ 「みらいめがね」 #2019/05/24



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